2008年08月17日

「本を読む本」M.J.アドラー著

 「本を読む本(著者 M.J.アドラー、講談社学術文庫)」というなかなか洒落た名前の本を見つけたので読んでみた。
 第1版は1940年にアメリカで出版され、1978年に改訂版が発行されたときに日本語翻訳版が出版されている。
 70年近い歴史のある本であるが、読んでみて、何ら時代的隔たりを感じさせない力作である。
 最近、速読技術を売り物にしている読書術のノウハウ本が多数出版されているが、著者のアドラーは「早ければいいというものではない。読者が本の性質や難易に応じて自分で読みの速さを変えることができるスキルが大事である。」と述べている。単なる知識のための読書には、有効であるが、理解のための読書は著者と読者とのガチンコ勝負であり、理解のためには様々な段階があるのである。また、同一主題について2冊以上の本を読む場合の手引も記述している。
 示唆に富む読書技術を以下に紹介していこうと思う。

1.読書のレベル
(1)第一レベル(初級読書)
   読み書きのできない人が初歩の読み書きを習得するもの

(2)第二レベル(点検読書)
   与えられた時間内にできるだけ内容をしっかり把握すること

(3)第三レベル(分析読書)
   取り組んだ本を完全に自分の血肉と化すまで徹底的に読みぬくこと
(4)第四レベル(シントピカル読書(syntopical))

2.第二レベル(点検読書)について

(1)組織的な拾い読み(下読み)
   @目的 
    いま手にしている本をさらに入念に読む必要があるかどうかを調べること

   A方法 
    ア.表題や序文を見ること
    イ.本の構造を知るために目次を調べる。
    ウ.索引を調べる
    エ.カバーに書いてあるうたい文句を読む
    オ.その本の議論のかなめと思われるいくつかの章をよく見る
    カ.ところどころ拾い読みしてみる

(2)表面読み
   表面読みとは理解できることだけを心に止め難解な部分をとばしてどんどん読み続けること。読書の速度 早ければいいというものではない。読者が本の性質や難易に応じて自分で読みの速さを変えることができるスキルが大事である。

(3)積極的読書 
   積極的読書とは読んでいる間に質問し、読書中にそれに自分自身で回答するように努力することである。質問事項は以下のとおり。
   @全体として何に関する本か
   A何がどのように詳しく述べられているか
   Bその本は全体として真実か、あるいはどの部分が真実か
   Cそれにはどんな意義があるのか

(4)書き込み
   その目的はいかのとおり
   @目覚めていられるため
   A考えるため
   B自分の反応を書きとめておくことは著者の言っていることを思い出すのに役立つので

3.第三レベル(分析読書)について
 
(1)本を透視する(第一段階)  
   @本の構造を把握する(規則1)
    分類の重要性 今読んでいる本がどんな種類の本か知らねばならない。できれば読み始める前に知る方がいい。←点検読書

    書名から何がわかるか、理論的な著作と実践的な著作か

   A本のプロット(全体の統一)の把握(規則2)
    その本全体の統一を二、三行か、せいぜい数行の文に表してみること

   B主要部分だけでなく、アウトラインの把握(規則3)
    その本の主な部分を述べ、それらの部分がどのように順序よく統一性を持って配列されて全体を構成しているかを示すこと

   C著者の問題としている点は何であるかを知る。(規則4)

(2)第二段階
   @重要な単語を見つけ出し、それを手がかりにして著者と折り合
    いをつける(読者が著者の言葉の使い方を理解する)

    ア.著者の使う言葉に注意する

    イ.キーワードを見つける

    ウ.専門用語と特殊な語彙に注意を払う

    エ.単語の意味をつかむ

   A著者の伝えたいことは何か
    ア.一つの文が常にひとつの命題をあらわしているとは限らない。
    イ.キーセンテンスを見つける
    ウ.重要な文がわかったら次に命題をみつける。

   B論証
    ある命題を論証するための論拠となる一連の命題に関するもをを見つける
    ア.どの論証にもいくつかの叙述が含まれていることに注意する
    イ.論証には帰納法によるものと演繹法によるものとがあり両者を区別する。
    ウ.著者が仮定しなければならないことは何で、論証や証拠によって立証できるものは何か、論証を必要としないものは何かを見定める。

   C著者の解決が何であるかを検討する。

(3)第三段階
   @知的エチケットの一般心得
    ア.概略と解釈を終えないうちは批評にとりかからない。
    イ.けんか腰の反論はよくない。
    ウ.批判的な判断を下すには十分な根拠を上げて知識と単なる個人的な意見をはっきりと区別する。

   A批判に対して特に注意すべきこと
    ア.著者が知識不足である点を明らかにすること
    イ.著者の知識に誤りがある点を明らかにすること
    ウ.著者が論理的に欠ける点を明らかにすること
    エ.著者の分析や説明が不完全であることを明らかにするこ と


4.第四レベル(シントピカル読書(syntopical)ー同一主題について2冊以上の本を読む場合)
  
(1)シントピカル読書の準備作業
   @図書館の目録、他人の助言、書物についている文健一覧表などを利用して、主題に関する文献表を作成する。
   A文献表の書物を全部点検して、どれが主題に密接な関連をもつかを調べ、主題の観念を明確につかむ。

(2)シントピカル読書
   @第一段階
    準備作業で関連書とした書物を点検し、もっと関連の深い個所を発見する。

   A第二段階
    主題について、特定の著者に偏らない用語の使い方を決め、著者に折り合いをつかせる。

   B第三段階
    一連の質問をしてどの著者にも偏らない命題を立てる。この質問には大部分の著者から答えを期待できるものでなければならない。
    しかし、実際には、著者がその質問に表だって答えていない場合がある。

   C第四段階
    さまざまな質問に対する著者の答えを整理して、論点を明確にする。あい対立する著者の論点は、必ずしも、はっきりした形で見つかるとは限らない。著者の他の見解から答えを推測することもある。

   D第五段階
    主題をできるだけ多角的に理解できるように、質問と論点を整理し、論考を分析する。一般的な論点から特殊な論点に移る。    各論点がどのように関連しているかを明確にすること。

5.本質的読書と付帯的読書
(1)本質的読書  
   他の本とかかわりなく、ある本一冊だけを読むこと(第1〜3レベルの読書)

(2)付帯的読書
   関連書の助けを借りながら読むこと(第4レベルーシントピカル読書に関連する)

   @読書に関連のある経験(特殊経験)
   A読書の手助けとなる他の本
   B注釈書や抜粋
   C辞書などの参考図書


6.文学読み方
(1)文学を読むときしてはならないこと 
   @文学を読むときはそれが心に働きかけるにまかせ、それに応じて心が動かされるままにしておかなければならない。(文学の影響力に抵抗してはならない)

   A文学の中に名辞、命題、論証を求めてはならない。

(2)文学を読むときの一般法則(教養書の読み方の規則の応用)
   @本の構造を調べ統一と部分の成り立ちを発見するための規則
    ア.文学作品の種類を知ること
    イ.作品全体の統一性を把握すること
    ウ.部分がどのように全体を構成しているかを知ること

   A本の構成要素である名辞、命題、論証をつきとめ解釈するための規則

    ア.登場人物、事件、エピソード、登場人物の思想、会話、感情、行動が作品の要素である。
    イ.読者はこの想像の世界に住みなれたひとりの住人として情景を見守り、人物と人物と親しくなって事件や悩み事にも友人同士のように付き合う。
    ウ.教養書は論理の運びを追うが、文学作品の場合は登場人物の動きについていかなければならない。

   B著者の主張に賛成するか反対するかの態度をはっきりできるようにする規則

    作者が読者に経験させようとしたものを十分に感得できるまでは批判をしてはならない。本当の批判を全うするためにはその本のどこが良くてどこが悪いかを具体的に論じ、またその理由を述べなければならない。

(3)小説の読み方
   @読み方 
    ア.一気に読む。
    イ.早く読む
    ウ.作品に没入して読みふける。
   A積極的読書の4つの質問との対比
    ア.何に関する本か→物語のプロットの統一性の中に見出さ れる
    イ.何がどのように述べられているか→作中の人物や事件を読者が自分の言葉で説明できることである。
    ウ.この本は全体としてあるいは部分的に真実か→その作品が読者の知性も感情も満足させているかが答である
    エ.それにどんな意義があるのか→この問いを小説や詩にあてはめることは見当違いである。

(4)戯曲の読み方
   @できるだけ一気に読む
   A戯曲は本来舞台で演じられるものであり、作中人物を活かす背景の描写が小説ほどたっぷり入っていないので、読者が想像力をはるかに働かせて読む必要がある。

(5)抒情詩の読み方
   @一気に続けて読む
   A繰り返し、また声を出して読む。

   これらにより詩の統一性をつかむ。

   詩を理解するために修辞的にキー・ワードを見つけなければならない。

 
 以上、アドラーの読書術の要約を記載したが、最後にアドラーは、読者として精神的成長のためには、自分の力以上の難解な本に立ち向かうことの必要性を説いている。そして、さらに、人間の精神の成長には限界がなく、精神鍛錬の重要性を謳っている。

 私も、著者が精魂こめて書いたすぐれた本への挑戦し、絶え間ない精神の成長を目指して、読書に励もうと思う。
posted by もの好き本好き at 23:59| Comment(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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